今回は「分散化」についてSAKEの現時点の考えをお話をしようと思います。
あくまで他のプール運営に意見するわけではありません。
所要5分程度なので良ければ読んでもらえると幸いです。

分散化のお話の前に

分散化についてお話しする前に、ブロックチェーンのトリレンマについてお話しします。
イーサリアムのファウンダーのVitalikは、ブロックチェーンの重要な３要素を「スケーラビリティ」「分散化」「セキュリティ」として、これらの全ては同時に実現されないことを唱えました。


・分散化
一部の信用や権限に頼らずにチェーンが成り立つ度合い

・スケーラビリティ
処理速度、拡張性

・セキュリティ
攻撃者が存在する前提での安全性

ヴィタリック氏が提唱したトリレンマのイメージ図
（出典：https://vitalik.ca/general/2021/04/07/sharding.html）


PoW、PoSの２つのコンセンサスアルゴリズム(※)でこれらがどうなっているか見ていきましょう。

※取引データを格納するブロックを「誰が作るか」を定義し、そのルールにもとづいて作られた1つのブロックを「正しいブロック」として認めるというルールのことです。参加者の行動を決定する動機となる構造で、そのチェーンの根幹となる概念です。

PoW

ビットコイン、イーサリアムなど

＋　分散性

ー　スケーラビリティ

＋　セキュリティ

(＋は重視、−は犠牲を表現します）

→スケーラビリティを犠牲にして、分散性、セキュリティを高めた構造です。Layer2ソリューションでスケーラビリティを解決を目指しています。

PoS

カルダノなど

ー　分散性

＋　スケーラビリティ

＋　セキュリティ

(＋は重視、−は犠牲を表現します）

→分散性を犠牲にして、スケーラビリティを高めた構造です。分散性が低すぎるとセキュリティが担保されなくなります。


このように３要素を同時に重視することが出来ない（現状出来ていない）と言われています。

分散化が失われると

分散性が低いと、特定の参加者のみ利益を享受する既存金融システムの構造に近づいていきます。
さらにネットワークの過半数51%のリソースを攻撃者が握ると、攻撃者によるデータ改ざんを止めることができなくなり、ネットワークの信頼性が失われます。
ただし、国が管理するCBDCのように、信頼できる中央がコントロールし、スケーラビリティを確保する方が良いのでは、と評価する方もいます。

カルダノは

ネットワークに存在するノード（以後プールと呼称します）は3,100を超えますが、51%を超えるリソースは現在21の運営者によって保有されています。



Binanceを例にすると57のプールを運営し、ネットワークの12％のリソースを保有しています。
Binanceの取引所内で保有したままのADA、または取引所内でステーキングしているADAがこれに該当します。
取引所内のステーキングの年利は、プールでのステーキングより少し上乗せしているため人気を集めていると想定されます。

委任が集中すると、↓の循環が発生します。

委任が集中→運営者の報酬増加→委任を増やすべく資本投入→委任がさらに集中→・・・

資本主義経済に似ていますよね。
ただしブロックチェーンとしては、セキュリティを担保するために、分散化はある一定確保しないといけません。
スケーラビリティと分散化がトレードオフとなっている状態です。
ここの綱引きを私たちコミュニティの皆で考え、選択していく仕組みが現状のPoSとも言えます。

カルダノネットワークの登場人物

ここで、ネットワーク、ステークプール運営者、dApps運営者、ネットワーク利用者の４つに分けて、それぞれの主たるインセンティブについて考えてみようと思います。


・ネットワーク
カルダノネットワーク自身。

【インセンティブ】
ADAの価値向上
【行動】
ネットワークの機能改善、分散化を一定確保するパラメータの設定、dApps運営者のサポート

・プール運営者
トランザクションの検証を行うノードを管理し、ネットワークの正当性、セキュリティを担保する。

【インセンティブ】
ステーキング報酬、dApps運営者からの報酬
【行動】
委任募集マーケティング、マージン手数料調整、複数プール運営、dApps運営者のサポート（例：SundaeSwapのScooper）

・dApps運営者
カルダノエコシステムを開発／運営し、ネットワーク内で経済活動を行う。

【インセンティブ】
経済活動の収益、発行トークンの価値向上、カタリストでの資金調達、プール運営者としての収益
【行動】
コンテンツの充実、コミュニティ活動、ISO、プール運営

・ネットワーク利用者
ADAの送金やdAppsの利用をする。プールへ委任することで報酬を得ることが出来る。

【インセンティブ】
ステーキング報酬、保有トークン価値向上、エアドロップ
【行動】
ISOなどエアドロップのあるプールでステーキングする。


現在、dApps運営者がプール運営をすることが増えてきており、徐々に複数プール運営を始めています。
（セキュリティ担保のための報酬体系に、ネットワーク経済活動者が参入している状態とも捉えれる？）

IOG/IOHKはどう動いている？

ステーキング報酬に関するパラメータの調整で分散化をある一定確保しようとしています。
以前に何度か調整されてきました。
https://docs.cardano.org/core-concepts/pledging-rewards
k：望ましいプール数(現在500)
a0：誓約の影響係数(現在0.3)

a0を上げることで、複数プール運営への抑止となり、kを上げることでブロックを作るプール数が増えると考えられています。
現在は、a0を見直ししマルチプールへの抑止の後、kを1,000に設定し、分散化を促進することを検討(※)しているとのことです。
複数プール運営の上限に歯止めがかかるようなパラメータが存在しないため、a0の調整（もしくは他のレイヤーで代替する報酬体系）がない限りは分散化は少しずつ減少していくことが懸念されます。
※2021/3に予定されていたkパラメータ1,000への調整は予定日未定で延期されています。

プール運営者の現状

望ましいプール数が現在500とパラメータ設定されている中、3,100以上のプールが稼働しています。
その中で、ネットワーク内で経済活動をしているdApps運営者が、複数プール運営に乗り出してきているため、熾烈な競争が起きています。

純粋なプール運営者は

• 委任者に対し魅力的なインセンティブを提示
• カルダノネットワークへの貢献
• 社会／世界への貢献

など、明確な価値提供の重要性がさらに増してきています。
リタイヤするプールも日に日に増えてきています。

SAKEはどう考える？

現状、カルダノネットワークはdApps運営者への投資に振り切り、分散化の犠牲を受容して、利用拡大を重視している形と捉えています。
利用拡大はとても喜ばしいですが、集中化が進むと、戻すことは難しくなると考えます。
ここは現実世界の既得権益と同じですね。

なので、カルダノの長期的な価値向上を目指すSAKEは、利用拡大期であっても常に分散化は考慮すべきと考えます。
ネットワークはコンセンサスが正しく機能することが一番で、その維持がプール運営者の１番の使命だと考えるからです。

そのため、SAKEは「個」と「複」の境界を明確に超えず、シングルプール運営を維持します。
またマージン手数料はCoffee Pool☕️さん提唱の累進制をとります。
(Coffee PoolさんはSAKEがプール運営するきっかけとなった方で、広い視野でカルダノ分散化を模索、実践されています)

その上で、開発者としてカルダノの価値向上に繋がるような活動を進めていきます。
現在、今後のdApps/ツール開発のため、DAOの開発コミュニティでの活動、カルダノ開発用言語のPlutus Pionner Programに参加しています。
活動を応援いただける方は、是非SAKEでステーキング頂けると嬉しいです。

※「dAppsのアイデア」や「解決したい事」を募集中です。プロジェクトに繋がった場合はインセンティブをお出しします。



以上、最後まで読んで頂いてありがとうございました。